――『僕とロボコ』連載4周年ということで、記念4大企画の1つが、モデリング界の巨匠、横山宏先生とのまさかのコラボレーション。スペシャル対談です。『ロボコ』らしからぬ真面目なトークをしていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。

宮崎周平(以下:宮崎):よろしくお願いします!

横山宏(以下:横山):よろしくお願いします!

――まず前提として週刊少年ジャンプ読者の皆さんにお伝えしておきますと、もう横山先生と言えばですね、イラストレーターであり、モデラーでもあり造形作家でもあります。ジャンプ作家さんにもファンであったり影響を受けた方も多いでしょうね。とにかくすごい方でございます!

横山:すごくないんで、そこらへん省いちゃっても大丈夫(笑)。『僕とロボコ』連載4周年おめでとうございます。ちなみに自分も去年40周年になっちゃいました。造形や絵を描いて40年…ちょうどいいんですよ。10倍ほどいい。おじいちゃんがまだこういうのやってて、若いクリエイターの方たちと一緒にやる。だったら、面白いことやんないと恥ずかしいじゃないですか。おじいちゃんとして(笑)。だから今回のコラボも面白かった~!

宮崎:素晴らしいですね。コラボさせていただけて光栄です。

――今回のコラボレーションは、Peace&Afterさんの橋渡しで実現したということなのですが、横山先生が『ロボコ』に興味を持たれた経緯をご説明いただいてもいいですか?

横山:はい。失礼ながら『僕とロボコ』の事は知らなかったんですよ。で、「『ロボコ』とコラボやりませんか」っていうお話を頂いたことを機に、「じゃあその『ロボコ』ってやつちょっと読んでみるね~」みたいな感じで読み始めたら、これが面白い!テンポといいSF的な設定といい、あと何しろ出てくる事象というかイベントごとが、割とこう身近な出来事だったりするので、もうめっちゃツボで(笑)。喜んでコラボさせていただくことになりました。

宮崎:ありがとうございます!

――横山先生、ロボコはわかるのですが、今回なぜ「カニオ」を選ばれたのでしょう?

横山:実は今回のコラボのお話しを受けた時には、まず「カニオが作りたい」というところから始まったんです。だからすぐにカニオのスケッチを描いて、「とにかくカニオのソフビが欲しい!」という一心でスタートしました。

宮崎:そうだったんですね…まさかのカニオ…!

横山:僕らが育った時の特撮作品に出てくる怪人とかね、カニオの造形はもう、まさに「怪人モノの極み」で、それをロボコがあっさりと倒すシーンのテンポといい、めちゃめちゃ面白かったんです。

宮崎:ありがとうございます。カニオのスケッチもメチャメチャかっこいいですね!

横山:もうなんかね、スケッチは打ち合わせから数日で描きました。どれだけ『僕とロボコ』が好きになったかがわかるでしょう?それで、「コレのソフビが早く欲しいから作ろうよ!」って言って、東京芸大出身でPeace and AfterデザインチームのKくんが、このイラストを元に原型を作ってくれました。ホントに教え子たちがこうやって作ってくれているので、先生はいいなと思いましたね。サブカル好きな子たちのど真ん中にいるので。宮崎先生の作品を立体化する際、手伝ってくれる若者たちの作業の流れが、めちゃめちゃビビッドなんですよ。あっという間にのめり込んで、「ここはこうなって、ここはそうなって…」という流れがすぐにできました。

宮崎:すごい…ホントにガチで作ってくださったんですね。

――さらに通常のロボコと、S.A.F.S.のロボコバージョン!

横山:最初は「ロボコが搭乗するS.A.F.S.があったらいいかな…」と思っていて、ロボコとS.A.F.S.をどうやって組み合わせようかと思っていたんですけど、S.A.F.S.を眺めていたら「この膝がもうそのままロボコじゃん!」って事に気づきまして(笑)。「それじゃあ、ロボコカラーのS.A.F.S.としてペイントしよう」となったんです。それで、せっかくだったらおさげのバーニアを付けて、飛べるようにしてもいいかなって。デザインして、原型も作って、色見本まで全てやらせてもらいました!

宮崎:すごい…。こうして見ると、ロボコって意外と肌色が多いんですね。

横山:なんかツルツル頭の親父がハチマキ巻いてるみたいでしょ?でもそれが楽しくて(笑)。

宮崎:いやいや、絶妙な違和感があって、でもそれが嬉しいです!

横山:自分でS.A.F.S.の色をロボコ色にしたら、「メチャメチャ欲しい!」ってなったんです。いつもそうなんですが、商品を考えるときに、自分が欲しいっていう理由以外に考えたことないんです。かっこいいかどうかじゃなくて、「自分が欲しい」。

宮崎:私も欲しいです!

横山:ロボコとS.A.F.S.は本当によく似ていて、エプロン部分の形とか、最初からロボコだったんですよね。だからパーツの1つ1つ、塗装見本として自分で塗ったんですよ。それで一度プロトタイプを作ったんだけど、ロボコといったらおさげかなと思って、おさげを意識して背面のバーニアも造形したんです。

宮崎:ロボコも空を飛ぶ時にはおさげが回転するんですが、バーニア!

横山:40年前にS.A.F.S.をデザインした時に、やっぱり装甲服という設定なので、膝はガッチリしてた方がいいと思ったんです。そうして今回のコラボ作品を造形する際…とりあえず自分の膝をじーっと見ていたんですよ。そうしていたらうちの奥さんが『僕とロボコ』を読んでいて、「ロボコの膝ってあなたの膝と同じね」って(笑)。言われてみればロボコの膝や太ももって、なんかすごい似てるなって思いました。

宮崎:たしかに、横山先生は立派なお膝ですよね。

横山:ここ10数年は毎日スクワットを欠かしたことがないんです。なんでそんなことをやってるかっていうと、サッカーやってるからなんです。65歳以上のリーグっていうのが東京都にあって、めっちゃ面白いですよー。おじいちゃんいっぱい集まって、平日からサッカーやって、その後宴会に行ったりとか、僕はお酒は飲まないなんですけどね(笑)。だからかな…なぜか膝がしっかりしてロボコ膝になってた(笑)。

宮崎:ロボコ膝(笑)。膝って成長するんですね。

横山:ほんとにね。『僕とロボコ』とは運命を感じますね。

――プラモデルやフィギュアという選択肢もあったのではと思うのですが、今回はなぜソフビという形態になさったのでしょう?

横山:最初はフィギュアにしようかって話があったんですけど、今ソフビが熱い。ソフビのマーケットってすごいんですよ。インディーズソフビとかも流行っていて、小さなものがすごい値段で販売されたりして。あと、やっぱりこのキャラクター。S.A.F.S.はもちろん、ロボコもカニオもだけど、ボリューム感があるなって。ソフビになった時に、なんか温かみというか存在感というか、特撮の怪獣や怪人のような存在感があって、ソフビとすごくマッチするなと思ったんです。

宮崎:なるほど!

横山:カニオのハサミが可動するので、メモくらいなら持たせられますよ(笑)。

宮崎:文具スタンドみたい(笑)。

横山:誕生日カードとか、カニ道楽のメニューも挟めるんじゃないかな(笑)。

宮崎:今日のおすすめメニューを挟んでおいたり(笑)。

横山:やっぱおもちゃってなんかね、「こんな遊び方もできるよ」って子供が自分でクリエイトできるようになってるんですよね。そこがいいところ。

宮崎:子供が帰ってきた時に「冷蔵庫にチャーハン入ってるよ」とか、メモ貼っておいてもらえますね。

横山:あと演奏するときにこう、楽譜立て。

宮崎:遊びかた無限大!

横山:ロボコの方はね、おさげのバーニアに穴があるから、ペン立てになりますね。

宮崎:すごいなこれ。実用性がありますね(笑)。

横山:ありますあります。これヤバいな…。

――手に入れた人も、きっとこういう遊び方をクリエイトしてくれるんでしょうね。

宮崎:しますね。今のお子さんとか、おもちゃを持たせたらもう何でもやりますからね。

横山:こんなおじいちゃんが楽しんでるんだから、お子様や若者たちはもっとすごいことやってくれるよ、きっと(笑)。

――横山先生の造形やデザインの発想はどのように出てきたのでしょう?発想の原点のようなものがあればぜひ教えてください。

横山:浪人してから美大を受験することを決めたので、まずは短期間で合格するための作戦を立てたんです。それは過去の合格作品を見ながら構図や陰影、鉛筆のタッチを模写しまくることでした。それこそ、実物を見なくても描けるぐらい徹底的に。それでなんとか合格できた。本気で美大に行こうと思ったら、2週間ぐらい必死でそれやれば何とかなるものなんですね。その時に行っていたのが、「分析」と「模写」と「自分の個性を消す」技術。だから他人様の絵のタッチを模写するのが得意になったんです。

宮崎:すごいですけど、それは相当目がよくないと…(笑)。

横山:必死にやればなんとかなります(笑)。それからやっぱり、美大の2年か3年の頃に観た『スター・ウォーズ(1978年日本公開)』。この作品には革新的なプロップ(小道具や大道具)がたくさん登場したんですが、それらを作る際の工程が面白かった。まずデザイナーがデザイン画を描いて、それを元に作るんですが、いろいろなプラモデルのパーツなんかを集めて形にしていくんですよ。「これだ!」って思いましたね。『スター・ウォーズ』の影響で、模型のパーツ使って「アッサンブラージュ」…立体物を寄せ集め組み直して、いろんなものを作るのがどんどん面白くなっていったんです。そうしていたら、視覚伝達デザイン学科の大学院の先輩方が教授に話してくれたみたいで、合田佐和子さんから唐十郎さんのお芝居の背景を描く手伝いをしてほしい、という話が来たんですが、教授たちが自分を紹介してくれました。

宮崎:スゴイ。学生の頃にもう…。

横山:ここで活きて来たのが、「分析」と「模写」と「自分の個性を消す」こと。その仕事では、合田佐和子さんの描くタッチが求められているので、オリジナリティは無い方がいいに決まってる。突出した才能や個性はなくても、正確に見たものを描く技術で押していけばいろんな可能性が広がっていくことに気づいて、それから絵だけじゃなく得意だった立体物も作りはじめたんです。

宮崎:なるほど。

横山:Ma.K.は、そうしたオリジナリティとは逆の方面で培ってきた技術と、アッサンブラージュで造り上げた集大成という感じですね。

宮崎:ちょっとすごすぎますね(笑)。

横山:いやいや。でも『スターウォーズ』に影響を受けた僕の技術の方向性が、今度は下の世代の主流になっていくのもありがたい。おじいちゃんになって、僕にインスパイアされたっていう若いクリエイターさんたちと知り合いになれてね…。だから波長が合うと思った宮崎先生のようなクリエイターさんとのコラボって面白いなって思いますね。

宮崎:ありがとうございます。

――横山先生はもう当然ですけれども、宮崎先生も4周年ということで。アーティストとして長い間活躍する秘訣みたいなものはありますか?

横山:宮崎先生がお先にどうぞ(笑)。

宮崎:私は4年目で、それが長い方だとしたらですが、その秘訣は「しっかり休む」というか、自分自身のメンテナンスをする事かな…。本当に、サウナに行ってマッサージするみたいなのとかを定期的にやるとか、あと、「もう今日はお酒を飲んでしまおう」みたいな日を作っちゃうとか…。原稿をあげた次の日とかは、もう遊んじゃう。お酒もめっちゃ飲んじゃう。で、「締め切りが迫ってくるとやるんで、あの人は」と編集部に思ってもらう。2年目の途中ぐらいからそのやり方に変えて、今それでやれているんです。だから私の中では、長く続けるのは息抜きの方法をうまい事作れたのが良かったのかな…と思います。

横山:大変ですよ…漫画を描き続けるというのは。コンプライアンスも自分で考えつつ、アイデアを出さなきゃいけないしね。いや、ほんとに偉いな。偉いですよ、ほんと!漫画家、クリエイター。じーっと座って働き続ける僕らのような座業って、「それをやめることができないような人」がやっているんだと思うんです。放っておくとそればかりやるような危ない人ばかり(笑)。編集者とか周りの人が休ませてあげるとか、ちょっと運動させるかとか、そういう事を促してあげないとキケン。座ってる時間が長いほど寿命が短くなるっていうのは、もう科学で証明されてることなんで。

宮崎:編集とはよく歩きながら打ち合わせしてます。

横山:それはいいですね。1時間おきに10回だけスクワットをするとかでもいいですよ。

宮崎:あ、それもいいですね。10回ならいけるかな…(笑)。

横山:そう。とにかく座業をどう解決するかが、全クリエイターにこの先課せられる事。長く続ける秘訣だと思います。

宮崎:なるほど。

――ありがとうございます!それでは最後に今回のコラボアイテムのオススメポイントを言っていただきつつ、締めの言葉をいただけますでしょうか?

宮崎:膝。

横山:艶かしさ。

宮崎:後頭部。

横山:肌色の部分を増やすだけで、有機的な感じが一気に出てくる。それが艶めかしくて面白い。

宮崎:じっと見てると、なんか怪獣とか怪人感が出てくる。

横山:「怪人ガマメイド」みたいな(笑)。

――オススメポイントだらけですね(笑)。

宮崎:描き続けていると、こんなに嬉しいことがあるんですね。本当に感謝です。読者の皆さんが読み続けてくれると嬉しいことが増えるので、これからもよろしくお願いします!

横山:これからも『僕とロボコ』を読み続けましょう!そして、お父さんお母さんにお願いしてコラボ商品も全部買ってもらって(笑)。おじいちゃんでも一緒にこうやって楽しめる作品なので。若い子たちが「こういう楽しみ方あるよ」って感じで、思いもよらない遊び方を見つけてくれるといいですね。そして我々もさらに面白い遊び方を編み出してくと思います。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6

僕とロボコ ソフビ

●メーカー:株式会社ブラザーフッド・コーポレーション
●価格:僕とロボコ ロボコ ソフビ/価格:10780円(税込)
僕とロボコ カニオ ソフビ/価格:10780円(税込)
僕とロボコ S.A.F.S. ソフビ(ロボコバージョン)/価格:15180円(税込)
●受注開始日:7月16日(火)